「あいつがさ、いつも羨ましがるんだよ。若様、なんでかあいつにだけは撫でられるの嫌がってただろ。あれでも一応、性別は女なんだぞ?」
『宮崎くんばっかりずるい!私も撫でたいのに』と訴える声が、頭の中に響いてくる。
そうやって彼女はいつも、仲睦まじい宮崎と若様の様子を、羨ましそうに眺めていた。
「わかってるとは思うけど、俺は男だからな」
犬の若様にとってすれば、撫でてくれる人間の性別なんてどうでもいいのかもしれないが、何となく不安になって一応申告してみる。
クリクリした瞳で宮崎の顔を見つめた若様は、まるで返事をするように、「わん」と一声鳴いた。
「わかっててくれて嬉しいよ。まあ性別は関係なくても、たまにはあいつにも撫でさせてやってくれよ。あいつ、結構動物好きなんだぞ?それなのに、お父さんが動物アレルギーだからペットが飼えないって、昔からよくグチってるんだ」
宮崎には会うたびにこうして擦り寄ってくる若様も、彼女にだけはなぜか態度が素っ気無い。



