何となしに若様の方に視線を向けると、何かを期待しているようなクリクリした黒い瞳と目があった。
他にすることもないので、宮崎は、その無言の訴えを聞き入れて腕を伸ばすと、要望通り若様の頭を優しく撫でた。
気持ちよさそうに目を閉じた若様が、更に続きを催促するように、グイグイと頭を手の平に押し付ける。
縁側に腰掛けて本格的に撫で始めれば、若様もすぐ隣にくつろいだ様子で体を伏せた。
「若様って、オスだよな」
質問しているというより、確認しているような宮崎のその声音に、若様が僅かに顔を上げる。
「犬って言ってもオスならさ、やっぱり女の子に撫でられる方が嬉しかったりしないのか?」
問いかけても答えが返ってくるわけもないが、それでも宮崎は「どうなんだ?」と更に問い詰める。



