「小学生の時、よくやったの覚えてる?この間、物置片付けてたらこれが出てきたから、せっかくだし、また流してやろうかと思って」
そう言って掲げられた青竹を見やった宮崎の頭に、まず真っ先に高知の顔が浮かんでくる。
きっと彼がいたら、飛び上がって喜ぶだろうことは想像に難くない。
次に、柚花を思い浮かべる。
柚花もまた、高知の勢いにつられるようにして、きっと楽しそうに笑うのだろう。
最後に、彼女の顔が浮かんだ。
夏はそうめんばかりでもう飽き飽きだとぼやいたみんなに、では思い切って流してみてはどうかと最初に提案したのは彼女。
夏が好きな彼女は、いつだって夏を楽しむ事に全力だった。
「高知先輩も柚花ちゃんもいなくて残念だけど、また来年、みんなでやればいいことだし。その前に試運転ってことで」
和果子の声に、宮崎は思考の波から浮上する。
竹を持って外に向かう和果子について、宮崎も先ほど脱いだばかりの靴にまた足を入れた。
「おばあちゃん、竹、セットしてくる。あっ、お鍋もう火にかけてあるから」
ドアの前で振り返った和果子に、祖母は頷いて台所へと向かう。
残された若様は、「わふっ」と鳴いて、見送りに精一杯しっぽを振ってくれた。



