「でも若、嬉しいのはわかるけど、宮崎くんを押しつぶしたりしてはいけないよ。そんなことをしたら、もう遊びに来てくれなくなるからね」
まるで子供に言い聞かせるように和果子の祖母が語りかけると、若様はまるでその言葉を理解したように宮崎から体を離して、ほんの少しだけ俯いて上目遣いにこちらの様子を伺ってくる。
その様子がまた堪らなく可愛らしくて、宮崎は腕を伸ばして丹念に体を撫でてやった。
「若は策士だね」
その様子に、和果子の祖母は可笑しそうに笑う。
満足そうに撫でられている若様を見れば、宮崎もまんまとその策中にはまってしまったと感じないではないが、それでもやはり可愛いものは可愛い。
祖母を探して台所から出てきた和果子も、目の前の光景にクスリと笑みをこぼした。
その手には、なぜか真っ二つに割られた青竹が握られている。
若様の相手をしながら、不思議そうに首を傾げる宮崎に、和果子は得意げに笑ってみせた。
「今日のお昼はね、流しそうめんなの。だから宮崎も呼んだんだよ」
“流しそうめん”という何とも懐かしいその響きは、懐かしさだけでなく涼しさもまた感じさせる。



