箱を持って台所へ消えた和果子の声に、宮崎は顔を上げる。
その瞬間、タイミングよく現れた和果子の祖母と目があった。
「あらまあ、大きくなったね」
しみじみとしたその声音は、どこか懐かしくて優しい。
昔はシャッキリと伸びていた腰がやや曲がっていて、少し小さくなったような印象も受けるが、それでも久しぶりに会った和果子の祖母は元気そうだった。
「もう高校生ですから」
こちらも、昔に比べればだいぶ背が伸びたし、声変わりも済ませているので、きっとやや印象が異なっているはず。
それでも、和果子の祖母は変わらない優しい微笑みで宮崎を出迎えた。
「いらっしゃい、よく来たね」
その声に被せるように、若様も「わふっ」と鳴いて、来訪を喜ぶように宮崎の手に体を擦り付ける。
「若は昔から宮崎くんの事が好きだったからね。きっと嬉しいんだね」
勢い余って押し倒されそうになっている宮崎を、和果子の祖母は柔らかく目元を細めて眺める。



