「柚花ちゃん、丁度いいところに!」
突然声をかけられてビクッと肩を揺らしたのは、お使いの帰りなのか、ビニール袋を手にそっと二人を追い抜こうとしていた柚花だった。
俯きがちにメガネを押し上げた柚花は、おずおずと視線だけを上に向ける。
「柚花ちゃんは、どこのお店のシュークリームが好き?」
いくらなんでも唐突過ぎるその問いかけに、やはり柚花はキョトンとして目を瞬かせる。
それでも何か答えようと、きょときょとと忙しなく視線を動かして、小さく口を開いては恥ずかしそうに俯き、しばらくしてまた視線だけを上向ける柚花を、彼女はワクワクした瞳で見つめている。
どのタイミングで助け舟を出すべきか悩んでいた宮崎の前で、柚花は小さく開いた口からか細い声を発した。
「……わたし、は……“コッコ”のしゅうくりーむが、一番……好きです」
柚花の答えに、彼女の顔に花が咲いたような笑みが浮かぶ。



