「シュークリームは見たことあるし、食べたこともあるよ!こう……ほわんって感じにまるまるしていて、中にクリームがたっぷり詰まってずっしり重たいお菓子でしょ。私的には、生クリームとカスタードクリームが両方入っているのが好きなんだけど。あっ、でも、季節限定のレモンクリームも、爽やかな酸味とちょっぴりの苦味が何だか大人な味で美味しいの」


「食べたことある?」と聞かれて宮崎が首を横に振ると、更に彼女は幸せそうに頬を緩めて、聞いてもいないのにシュークリームについて語り続ける。

道のど真ん中に立ち止まって突然シュークリームについて熱く語りだしても、誰にも迷惑がかからないほどに、周りには人がいない。


「皮もね、ぱりっとしているのもあれば、ほどよくしっとりしているのもあって。あっ、ざくざくした食感のやつもあるんだよ!お店によってそれぞれ特徴も違うし、でもどれが一番って決められないくらい、全部が全部美味しいの。けど、強いて一つを選ぶとしたら……そうね、やっぱり“にわとりコッコ”のしゅうくりーむかな」


宮崎も、聞いたことがあるし何度か食べたこともある、車もしくはバスを乗り継いで行かなければたどり着けない、隣町のケーキ屋の名前を口にして、それでも彼女はまだ決め兼ねているように眉間に僅かに皺を寄せる。