にわとりとひよこ、更には卵のイラストまで描かれた便箋をポケットに、宮崎はふと空を見上げる。

どこかでセミが鳴いていた。

その鳴き声を連れてくる風は、むわっとしていて蒸し暑い。

相変わらず太陽はぎらついているし、立ち止まる道には見渡す限り日陰がない。

上に向けていた視線を進行方向に戻して、宮崎はペダルを漕ぐスピードを早めた。

暑くて暑くて堪らないが、風を切って自転車を走らせれば、少しはマシになる。

どこまで行っても見える景色はさほど変わらず、人影もまばら。

たまにすれ違うのもお年寄りばかりで、ごくごく希に目にするのは、村の学校に通う小学生か中学生。

それもまた年々数が減っていて、最近では村から引っ越して、町の学校に転校していく子も少なくないのだと柚花が言っていた。

その柚花も、先日顧問の先生から意気揚々と電話があって、以前から目をつけていた合宿場にようやく予約が取れたとかで、部活仲間と共に村を出ているので今はいない。

もしかしたら、誰も気がつかないうちにひっそりと、この村はなくなってしまうのかもしれないと、不意にそんなことを思った。

そう思って辺りを見回せば、見慣れたはずの景色がまた違って見えてくる。