綺麗な字が並んだ、水色に白い雲の模様がプリントされた便箋を手に、空を見上げる。

ふわりふわりと漂う雲が、風に流されて形を変えていく。

ポツンとバス停が置かれたその周りは、見渡す限りの田んぼ。

民家もなければ店もない、遠く離れた十字路に、忘れ去られたような自動販売機が一つあるだけ。

そんな寂しい場所に、人待ち顔の少年が一人。

古びた木のベンチには、大きめのボストンバックが置かれている。


「また、帰ってこられないのか……」


ポツリと呟いた声は、風に流され消えていく。

緑の匂いが混じった風は、夏の気配を濃厚に感じさせた。

大きく腕を伸ばして体を後ろに倒すと、硬い木の壁が背中を支え、ギシッと危うげな音を立てる。

ジリジリと焼け付くような太陽と、忙しないセミの声に、じんわりと汗が滲んだ。


「それにしても、あいつ……まだ携帯持つ気ないのか。いい加減買えばいいのに」


ぼそっと呟いて、スッキリと晴れ渡った空を見上げる。