ザーッと風が吹き抜けて、思いがけないその涼しさが、二人の顔を撫でていく。

それでも、日陰を出てしまえば風は未だに熱気を含んでいて、太陽は容赦なくギラギラと照りつけている。

けれどもなぜだかふと、夏の終わりを感じた。

もうすぐ、夏が終わる……そんな思いが、なんの前触れもなく宮崎の胸に湧き上がった。


「柚花ちゃんの宿題が終わったらさ、家に来ない?さっき冷凍庫見たら、アイスあったんだよね」

「アイスか……ちょうど食べたかった」


胸に湧き上がっていた気持ちが、“アイス”という言葉に負けて霧散していく。

二人で同時に視線を向ければ、真剣な顔をした柚花が、景色とスケッチブックを交互に眺めているところだった。


「終わったかな?」

「さあ、どうだろう」


何度も何度も見比べて、それから大きく一つ頷いて、柚花が深く息を吐くのが見えた。

どうやら、納得のいく絵が描けたらしい。