「それね、柑橘いっぱい使ってるけど、おばあちゃんの配合が絶妙だから、酸っぱすぎなくて結構何にでも合うよ。ハンバーグのタネに入れてもいいし、あんかけにしてもいいし、ご飯と炊き込んでもいけるし、煮浸しとかにしたらそうめんとかうどんに乗せても美味しいから」
「へー、割と万能なんだな」
感心したように瓶を眺める宮崎に、和果子が自慢げに胸を張る。
「なんたって、うちのおばあちゃんのレシピだからね。お母さんなんて、あたしをここまで送ってきた帰りに、五本も持って帰ったんだから。これがあれば、夏バテだって怖くないし」
くるくると瓶を回しながら中でゆらゆらと揺れる液体を眺めていた宮崎は、“夏バテ”という言葉に、ハッとして顔を上げる。
「これって、夏バテにもいいのか?」
その食い付きぶりに、和果子が驚いたように目を見張った。
「まあ……あたしは毎年夏になるとバテるけど、それがあれば食欲不振にも打ち勝てたかな。さっぱりしてて、後味もすっきりしてるから、それを使った料理なら夏バテ中でも食べやすいと思う」



