「何ですか、先輩」


問い返せば、高知がニコッと笑って答えた。


「来年は日向さん、帰ってくるといいな……」


「そうですね」と笑って返して顔を上げたとき、不意に和果子と目があった。


「じゃあね、宮崎!」


しかし直ぐに、ひらりと手を振る高知の声に、宮崎は視線をそちらに戻す。

ほんの一瞬、目があった時の和果子の表情は、何だか少し悲しげだった。

ぱたりと閉まったドアを見つめて、宮崎はぼんやりと立ち尽くす。

しばらくして、思い出したようにリビングに向かうと、四人分のコップをシンクに置いて、トランプの箱を手に二階へと続く階段をのぼった。


「そう言えば……あいつも、トランプは弱かったっけ。すぐ顔に出るんだもんな」


ポツリと呟いて階段をのぼりきり、自分の部屋に戻った宮崎は、まっさきに扇風機のスイッチを入れ、開きっぱなしになっていた引き出しにトランプをしまってから床に腰を下ろす。

それから、気合を入れ直すように深く息を吐きだして、シャープペンシルを手に、今度こそ宿題のワークと真剣に向かい合った。