今年の夏もキミを想う…。


それ以上何も聞きたくないとばかりに、両手で耳を塞いで首を横に振る宮崎に、和果子は呆れたようにため息をつく。

勉強の話題がこれ以上続く前にと、宮崎はやんわりと話題を変える。


「そういやさ、何か渡したい物があるって言ったよな。なにくれんの?」

「ああ、そう言えばそうだった。すっかり忘れてた」


本来の目的をすっかり忘れていた和果子は、宮崎の言葉に思い出したように立ち上がる。


「ちょっと取ってくる」


残っていた麦茶を立ったまま豪快に飲み干して、空のグラスを手に和果子は、またしても部屋を出て廊下の奥に消えていく。

その背中を見送って反対側に首を向けると、時間つぶしに気持ち良さそうに目を閉じる若様を眺める。

冷蔵庫を開ける音や、ガラス同士がぶつかるような音を聞いていると、回ってきた扇風機の風がふわりと顔に吹き付けた。

カランと音がして、グラスの中の氷が動く。

じんわりと溶け出した氷が、麦茶と混じり合ってその色を薄く染めていく。

味がしなくなる前にと、残った麦茶を一気に飲み干していると、ビール瓶程の大きさをした瓶を両手に和果子が戻ってきた。