「何か、使っちゃいけないものとかあるの?」
「どれ使ってもいいだろ。和果子が使ったって言えば、誰も怒らない」
「何それ」
クスッと笑って冷蔵庫の中を物色し始めた和果子の横から、宮崎が一緒になって冷蔵庫の中を覗き込む。
その思わぬ近さに、和果子の心臓がドクンと高鳴った。
「なに作るんだ?」
肩が触れ合わんばかりに近づいて、並んで冷蔵庫を覗き込んでいる姿はまるでカップル。
自分の想像に、また胸が高鳴った。
けれど、嬉しくて嬉しくて堪らないのに、なぜだか同時に胸が苦しい。
喜びに比例するようにして、胸がギュッと締め付けられるように痛い。
「和果子?」
ぼんやりしていた和果子の目の前に、不意に宮崎の顔が現れる。
驚いてビクッと肩を揺らすと、ドアポケットに入れてあった瓶がカチャンと微かに音を立てた。
見れば、それは和果子が以前おすそ分けしたドレッシングの瓶だった。
視線を前に戻せば、未だ宮崎が不思議そうな顔でこちらを見つめている。



