「み……見た?」
「いや……一瞬だったから、よく見えなかった。けどそれって、あれだよな。みんなで海に行った時の……」
「な、なんでもないから!!ほんと、ただの海の写真だから。気にしないで、てか忘れて!」
「お、おう……」
ただの海の写真とは思えないような和果子のリアクションに、宮崎は気圧されるようにしてとりあえず頷いてみせる。
本当に一瞬だけ見えたその写真には、先日見てきたのと同じ青い海の他に、やや端の方にビーチパラソルの下で座り込んでいる後ろ姿が、写っていたような気がした。
「な、なんていうかほら、年も年だからね、若様も。若っていうより、殿って感じだし。こんなふうに天気が悪い日は、脚の調子が悪いみたいで、ちっとも動きたがらないんだ」
半ば無理やり若様へと話題を戻した和果子に、宮崎も合わせるようにして応える。
ほんの少し漂う微妙な雰囲気に、和果子はグイっと麦茶を煽った。
心なしか頬が赤いように見えるその顔から目をそらして、宮崎も麦茶に口をつける。
しばらくして、コップの中の麦茶を一気に飲み干した和果子が、ふーっと息をついて、ぽそりと口を開いた。



