「遅い」
高知対策でかけていた鍵を外してドアを開けると、開口一番和果子が鋭く言い放つ。
「いや、ごめん。ちょっと寝てた。あと、高知先輩だったら居留守しようかと思って」
そう言ってドアを開け放てば、和果子がさしていた傘をたたんで入ってくる。
その傘は、遠くにいても目立つような、赤い色をしていた。
「そう言えば高知先輩、宮崎に冷たく却下されたから、今日のひまわりは延期にするって、すっごい落ち込んだ声で電話かけてきた」
和果子の言葉に、宮崎は疲れたようにため息をつく。
どうやら今日の予定を延期にしたことは、宮崎のせいになっていたらしい。
「冷たくした覚えはないけど。だって、この雨だぞ?」
「まあね、一応そうやってフォローはしておいたけど。尋常じゃない落ち込み具合だったから」
「そんなにひまわり見に行きたかったのか?」
「というより、みんなで遊びたかったんじゃないの」
水の滴る傘を玄関脇に立てかけて、和果子が靴を脱いでさっさと家に上がり込む。
宮崎が幼い頃から和果子の家に慣れ親しんでいるように、和果子もまた宮崎の家を勝手知ったる様子で歩き回る。



