「おーい、和果子ちゃーん!」
そんな宮崎の態度など気にも止めず、彼女が大声で叫んで手を振った。
流石に距離が遠いのか、それともやはり別人なのか、赤い傘は足を止めることなくドンドン遠ざかっていく。
けれど彼女は、元気よく水溜りを飛び越えて、自信満々に駆け出した。
ひまわり柄の傘が、宮崎の前を揺れながら遠ざかっていく。
「和果子ちゃーん、一緒に帰ろう!」
彼女が再び、大きく声を上げて手を振った。
遠くの方で、赤い傘が立ち止まったように見える。
「宮崎くーん!ほら、早く」
振り返って、彼女はマイペースに歩いていた宮崎を手招く。
雨の中だというのに、不思議とその声ははっきりと宮崎の耳に届いた。
再び走り出した彼女に、遠くの方で、赤い傘が僅かに振り返るのが見えた。
ひまわり模様の傘の下、雨雲を吹き飛ばすように晴れやかに笑って、水溜りなんてものともしないくらい軽やかな足取りで、彼女が大きく大きく手を振りながら駆けていく……。



