程なくして奥の方から冷蔵庫を開ける音や、カチャカチャとグラスを出す音、それにとぽとぽと何かを注ぐ音が微かに聞こえてきた。
和果子を待つ間、くぁああ…と大きく口を開いてあくびをする若様に手を伸ばす。
太陽の光りをいっぱいに浴びた長い毛は、じんわりと温かい。
腹ばいに近い格好で腕を伸ばすと、頭から腰の辺りまで、毛の流れに沿って手を滑らせ、耳の周りや顔の横も丹念に撫でる。
ぺったりと下についた尻尾が、まるでモップのように畳の上で揺れ動いていた。
「はい、麦茶。もし、めんつゆだったらごめんね」
カランと涼しげな氷の音に首を回すと、いつの間に戻ってきたのか、和果子が先ほどと同じ位置に腰を下ろしていた。
「普通、めんつゆかどうか確かめてから持ってくるだろ」
和果子が自分の分の麦茶を美味しそうに飲む姿に、宮崎は体を起こしてグラスに手を伸ばす。
水滴の浮いたグラスは、ひんやりと冷たくて気持ちいい。
念のため控えめに一口飲んでみると、めんつゆとは違う爽快感が体に染み渡った。
安心して二口目からは勢いよく喉を鳴らす姿を、和果子は見るともなしに見つめる。



