もちろん、勤しんでいるのは格好だけで、テーブルに広げられた宿題のワークは、ほとんど進んでいない。

雨が降って少しは涼しくなるかと思ったが、部屋の中は相変わらず蒸し暑いし、湿気で肌はべたつくし、扇風機が送ってくる風はどこか生ぬるいしで、集中力が続かなかった。

ごろりと床に寝そべれば、フローリングも心なしかベタベタしている気がして気持ち悪い。


「だから夏の雨は嫌いなんだ……」


天井に向かって、ポツリと不満を呟く。

同時に深くため息を吐き出せば、唐突に頭の中に懐かしい顔が浮かび上がった。

それは、まだ彼女がこの村で夏を過ごしていた頃、同じようなセリフを呟いてうんざりしたような顔をした宮崎に向けられた、晴れやかな笑顔。

憂鬱な雨雲を吹き飛ばして、今にも太陽を引き寄せてくれそうなその笑顔は、宮崎が最も好きな彼女の表情でもあった。