今年の夏もキミを想う…。



「さっきぶりだな、若様」


片手を上げて軽く挨拶すると、若様が応えるように一声鳴く。


「それにしても、自分で招いておいて居留守使うってどうなんだよ」

「宮崎だと思わなかったの。ドンドンドンドンって、取り立てみたいなドアの叩き方するんだもん。今おばあちゃんいないから、面倒な人の相手はしたくなかったの」

「……そもそも、取り立て屋にお世話になるような生活送ってないだろ」


テーブルに広げていたノートや教科書、参考書の類を隅に押しやる様子を眺めながら、宮崎はため息混じりに和果子の斜め前に腰を下ろす。

扇風機が一台首を回しているだけの部屋は、縁側の窓が全開になっているおかげか、かなり涼しい。

規則正しく回ってくる扇風機の風に毛先が揺れ、火照った頭も徐々に熱が引いていく。

涼しくて快適な空間に宮崎がくつろいでいると、ようやく片付けを終えた和果子が一息ついた。


「あっそうだ、何か飲む?」


思い出したように立ち上がった和果子に、「お茶」と簡潔に答えると、その姿は部屋を出て見えなくなる。