「それね、隠し味に、おばあちゃん直伝の特別なドレッシングを入れてるんだ」
「ドレッシング、ですか。それでこの味が……」
「あっ、良かったら柚花ちゃんにもドレッシングあげるよ。作りすぎちゃって、家にいっぱいあるんだ」
嬉しそうに笑って頷いた柚花が、また玉子焼きを齧っては幸せそうに頬を緩める。
その間に、宮崎はおにぎりをもう一つ掴んだ。
表面に何もついていない今度の中身は、海苔の佃煮だった。
「ん?」
何だか視線を感じてそちらを見てみれば、先程から自分では一切手をつけていない和果子が、チラリと宮崎の様子を伺うように視線を向けている。
首を傾げてみせると、和果子がそっと視線を外して俯いた。
「別に……悪くなってないかなって思っただけ。あとついでに……味は、どうなのかなって」
視線をそらしたままぽそぽそと呟いて、サンドイッチに手を伸ばした和果子に、宮崎はお米と海苔の佃煮を飲み込んでから口を開く。
「俺は毒見役かよ。まあ、その点に関しては問題ない。あと、味も美味しいよ。和果子、料理うまいんだな。知らなかった」



