「おーい和果子ー!」
ドンドンと激しくドアを叩く。
若様御一行と分かれてから小一時間は経ち、そろそろ散歩も終わっただろうという頃に、宮崎は約束通り和果子の家を訪ねていた。
しかしインターホンがついていないドアを何度もノックしているが、一向に人が出てくる気配はない。
「居留守か……?」
不満げにボヤきながら引き戸に手をかけると、思った通りドアはあっさりと開いた。
「お邪魔しまーす」
広々とした玄関に立って奥に声をかけると、一番手前の部屋からにゅっと和果子が顔を突き出す。
「何だ、宮崎か」
「何だとはなんだ。呼んだのは和果子の方だろ」
勝手知ったるとばかりに靴を脱いで家に上がると、飛び出していた和果子の頭がスッと部屋の中に引っ込む。
後を追うように部屋に入ると、縁側で涼んでいた若様がのっそりと顔を上げた。



