今年の夏もキミを想う…。


返ってきたそれぞれの返事に満足げに頷いた高知は、更に目の前の草を足で何度も踏み固めて、ようやく全員をそこに案内する。

高知に促されるまま、最後尾で懐中電灯を握っていた和果子が明かりを消す。

途端に真っ暗になった視界に、淡い光が見えた。

見下ろした先にあったのは、明かりの灯る小さな村。


「夜景、なんて呼ぶにはちょっと物足りないかもしれないけどさ。でも、綺麗だよね」


町の夜景にはもちろん遠く及ばないが、それでも確かに綺麗な景色が、そこには広がっていた。


「この時期がさ、一番綺麗に見えるんだよ。ほら、里帰りしてくる人達のおかげで、いつもより村が明るいから」


ポツポツと灯るその明かりの向こうに、確かな人の温もりがあって、反対に、暗闇に沈むその向こうには、悲しい現実も存在している。


「先輩、よく見つけましたね。この場所」


村を出てから、もっと綺麗な夜景を見る機会は何度もあった。

けれどその時見たどの夜景よりも、今ここで見ている景色が……儚くて、淡くて、でも温かいこの光が、宮崎は美しいと思った。