見上げていた星空から視線を下ろせば、先程までと変わらない、笑顔の高知と目があった。
「宮崎はさ、好きな人、いる?」
「なんですか……急にそんな」
「オレはね、いるよ」
宮崎の返事など、まるで最初から聞く気がなかったように、高知は被せ気味に言葉を続ける。
「でもね、近くにいるのに……遠いんだ。心がね、凄く遠い」
その言葉が、まるで自分の事を言われているようで、宮崎の胸が不意にずきりと痛んだ。
宮崎と彼女もまた、とても遠い。
心も、物理的な距離も、どちらも遠すぎる程に遠い。
思えば、ここ何年も彼女の顔を見ていない。
手紙だけのアナログなやり取りが、彼女と宮崎を繋いでいる。
「オレはさ、何よりもその子の事が好きだし、誰より幸せにする自信もある」
夏祭りの日、並んで花火を見ていた二人の姿が……高知の、愛おしそうなその視線が、不意に宮崎の頭に蘇る。



