自分で口にしていて胸が苦しくなるが、彼の顔を思い浮かべれば、苦しいだけでなく、ほんわりと温かい気持ちにもなれる。
二つの相反する気持ちが、ぐるぐると体中を駆け巡って、苦しくて、苦しくて、でもほんの少し温かくて、どうしようもなく切なくなって……和果子は、視線を下ろして笑った。
「二人が上がってくるとき、賽銭箱の後ろにでも隠れて、脅かしてやろうか」
「さっきの仕返しに」と言っていたずらっ子のように笑う和果子には、先ほど空を見上げていた時の、寂しそうな雰囲気がまるでなかった。
だから柚花も、先ほどまでの会話は全てなかったことのように、はにかむようにして笑みを返す。
「……そう、ですね」
柚花の声に応えるようにして、和果子は再び手を伸ばし、今度こそ思いっきり鈴を鳴らした。
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