闇の中、懐中電灯が照らした先に、聞いていた通りのお賽銭箱があって、その上に古びた鈴がぶら下がっていた。
初詣なんかで鳴らす鈴と同じものなのに、懐中電灯の明かりで見ているからか、それとも不気味な雰囲気のせいか、とても同じものには見えなかった。
けれども、もともとお化けなんて信じていない派の和果子は、ためらうこともなくずんずん前に進んでいく。
怖くはないが、それでも長居したくなるような雰囲気でないことは確かなので、和果子は早速鈴から垂れ下がった紐に手を伸ばす。
指先が触れる直前に、また柚花の声が聞こえた。
「どうしたの?柚花ちゃん」
よく聞き取れなかった声に振り返れば、柚花がまた真っ赤になって俯いている。
和果子は、紐に手を伸ばしたままの体制で首を傾げた。
しばらく待っても何も言わない柚花に、和果子が一旦手を下ろして体ごと向き直ると、途端にぱっと上向いたその顔には、思いがけず真剣な表情が浮かんでいた。



