「……随分と忙しいんだね」
ようやく口にした言葉は、自分でも驚く程感情がこもっていなかった。
けれど宮崎は特に気にした風もなく、ひらひらとはみ出していた手紙を、優しい手つきでポケットの奥に押し込む。
「忙しいのはわかるけどさ、たまには帰ってきてもいいよな。せっかくこうして、みんな里帰りしてるんだし」
立ち上がった位置から腕を伸ばしてわしわしと頭を撫でると、若様が気持ち良さそうに目を細める。
「それに、相変わらずのアナログ人間だし。携帯くらい買えばいいのに」
「そういうあんたも、いい加減スマホに変えたらどうなの?」
「これで十分。最新機器じゃなくたって、案外何とかなるものなんだぞ」
どこかで聞いたようなセリフに、宮崎はハッとして思わず眉をしかめる。
「日向さんも日向さんなら、あんたもあんたよ」
ため息混じりの和果子の声に軽く肩をすくめて見せると、若様がくわぁあと大きくあくびをした後、のっそりと立ち上がって足を踏み出した。



