「あのね、大した量じゃないから私一人でできるよ」
千隼がご飯を作ってくれたのだから、後片付けは私がするのだけど、
「二人でやった方が早い」
と、私が洗った食器を拭いてくれている。
本来なら二人の方が早いとは思う。
「キッチン狭いから身動き取れなくて、むしろ効率悪いんだけど・・・」
「・・・・・・」
普段はちゃんと返答してくれるのに、都合の悪いことは無視する人だということも、最近知った。
あとは服にはさして興味ないのに柔軟剤の匂いにはこだわっていることも、実は練り物があまり好きではないことも、高校時代はバドミントン部だったことも。
「そういえば大地と里奈、結婚式はしないらしい」
「そうなの?」
「あれだけ揉めたからな」
大ちゃんたちは親からの援助を断り、家族の顔合わせと記念写真だけで済ませることにしたそうだ。
親の想いは色々あるだろうけど、新婦を泣かせてまでする結婚式なんていらないと、私も思う。
「それで、友達集めたパーティーは別で企画しようってことになって、俺と総務課の木元さんが幹事頼まれた」
市役所職員は地元に密着してるせいなのか、同窓会などの幹事を任されることが多い。
木元さんはやはり大ちゃんたちと同じ高校で、里奈と親しかったのだとか。
「幹事なんて大変だね。仕事も忙しいのに。手伝えることあったら言ってね」
心配しているのは私なのに、千隼が気遣うような目線を向けてくる。
「菜乃も行く?」
「当然でしょう?行かない方が不自然だよ」
長い間引きずってきた私が悪いんだけど、そんな心配しないで欲しい。
「大丈夫!これ以上ないくらいに吹っ切れてるから。むしろあの二人のパーティーがつつがなく行われるかどうかの方が心配」
ウェディングケーキが潰れるくらいで済めばいいのだけど。
取りまとめる千隼と木元さんの方がずっとずっと気掛かりだ。
「多分、あの二人はケンカしてくっついたり離れたりしながら、ずっと一緒にいると思う」
「うん、私もそう思う。結局大ちゃんは、里奈がフラフラしたって最後に帰ってくれば許しちゃうんだよ」
たまに離婚しても一緒に住んでる夫婦がいるけど、あんなタイプじゃないかと思う。
それに里奈も、子どもができれば落ち着くような気がするのだ。
だから、あの二人は大丈夫。



