久しぶりに迎える千隼との朝は、これまでにないくらい濃密で、せっかくだから素敵な朝ご飯を作ってあげたかったのだけど。
「ごめん、またカレーで」
「世の中のほとんどの人が二日目の朝はカレーだと思うよ」
「せめてカレーうどんアレンジくらいはしたかったよ」
「身体辛いんだから無理しなくていい」
事実だけど、言葉にされると恥ずかしい・・・。
それを言われると何も言えなくなってしまう。
千隼は全部わかっていて、私の謝罪を封じるためにわざと言ったんじゃないかと思う。
このアパートは少し大きな通りに面していて、早朝でも車通りが多くて騒々しい。
それに加えて、食べているのは昨日と同じ味のカレー。
あの公舎の朝ご飯とは全然違うのに、心が満たされていくのを感じる。
公舎での豊かな朝は、きちんと作ったご飯でも、静かで清浄な空間のせいでもなくて、千隼がいたからなんだ。
「私ずっと千隼と朝ご飯食べるのが好きだったんだ。夜はほとんどバラバラだったでしょう?だから朝が嬉しかった」
「そう言ってくれれば夜も早く帰ってきたのに」
「仕事いっぱい抱えてるくせに?」
千隼が言葉を返せなかったのは、カレーを頬張ったせいじゃない。
実は昨日だって議会質問の準備を丸ごと放り出して来てくれたのだ。
だからこの土日は全部出勤しないと間に合わないらしい。
気持ちは嬉しいけど、実際には無理なのだ。
「無理して合わせてくれなくていいからね。でも朝ご飯は千隼と食べた方がおいしいね」
「それ、プロポーズ?」
「は?ええ!そういう意味じゃ・・・・・・・もし、そうだったら?」
「嬉しい」
「そ、そうですか」
甘い気まずさがあることも、今初めて知った。



