「ごちそうさまでした。おいしかったです」
「いえいえ、お粗末さまでした」
食べ終わって手持ち無沙汰になったタイミングで、千隼は早速斬り込んできた。
「ちゃんと説明してくれるんだよね」
洗い物をする時間すら与えてくれない。
目線と圧力で千隼の目の前を示され、大人しく座った。
「はい」
とっさにそう言ってしまったし、誤解を解くことはやぶさかではない。
けれど、どう話したら自分の気持ちが伝わるのか、千隼を傷つけずに済むのか、わからなかった。
そもそも、そんなうまい方法はないのかもしれない。
何度か口を開いては閉じ、迷っていると千隼の方から水を向けてくれた。
「大地が無理矢理したの?」
一瞬誤魔化すことを考えた。
無理矢理されたことにした方が収まるだろうか、と。
だけど結局ふるふると首を横に振った。
「じゃあ、何で?」
結局、私にできることは正直に全部話すことだけだ。
「したのは大ちゃんからだったけど、私も拒否しなかった。あの時はまだ、大ちゃんのことが好きだと自分でも勘違いしてたから」
私の中で「大ちゃんが好き」はもうずっと決まっていたことだった。
まさかそれが習慣のように染み着いて、自分自身の気持ちさえ見えなくしていたなんて、考えたこともなかった。
今だって大ちゃんのことは好きだ。
だけどそれはあくまで色味を失った過去の影。
消えた音の余韻。
それでもその影や余韻が残っているから、私は恋心が今尚存在しているのだと誤解していたのだ。
「大ちゃんとキスしてわかったの。全然ドキドキしないって。千隼に抱き締められた時は、あんなに痛いほどドキドキしたのにって」
「ごめんなさい」と付け加えるが千隼の反応はなく、ただ俯いてじっと自分の手の辺りを見つめていた。



