「千隼、久しぶりだね。大地から話聞いててそんな感じしないけど、こうやって飲むのなんて何年ぶり?」
同級生というのは本当だったようで、里奈はさらりと彼の名前を呼び捨てた。
「覚えてない」
「直接会うのだって久しぶりだよね。ほら、千隼が大地を送ってきた時以来じゃない?いつだっけ、あの、大地が寝ちゃった時」
楽しそうに大ちゃんの肩を叩く里奈の手を大ちゃんは迷惑そうに払った。
「・・・大学の卒業祝い。思い出したくないんだけど」
「そうそう!あの時、千隼が大地抱えて家に来たのが最後だ」
「そんなこともあったな」
里奈は元々明るい子だけど、彼の素っ気なさを気にしないのは慣れているせいなのだろう。
彼の方でも私と話す時と違ってくだけた口調だ。
「菜乃は千隼と飲みに行くことあるの?」
ドキッとする質問だったけど、ちょうどビールに口を付けたタイミングだったから、一口飲んで誤魔化せた。
「ないな。部も違うから一緒の飲み会なんてないよ」
〈一緒の飲み会〉はない。
実際こうしてお酒を飲むのは初めてのことだ。
だけどもし「一緒にご飯食べたりしないの?」って聞かれていたら、もっと動揺したと思う。
本当のことは言えないとしても。



