あれから依人は、薬の副作用のせいで寝ぼけ眼になり、ベッドに戻るや否やすぐに眠りについた。
縁は傍で静かに見守っていた。
(熱は先輩の言う通りあまりないね。よかった)
そっと手のひらを額に乗せると、あまり熱くなかった。
(先輩の寝顔を見るの、クリスマスの朝以来かも……本当に羨ましいくらい綺麗な顔だ)
睫毛の長さといい、滑らかな肌といい、依人は女子が羨む要素を持っている。
縁はスマートフォンのカメラに収めたい衝動を抑え、心のアルバムに依人の寝顔を焼き付けたのだった。
「そろそろ帰ろうかな」
スマートフォンの電源をつけると、画面の時刻は夕方の六時過ぎに差し掛かっていた。
そろそろ帰って、夕飯の支度をしなければいけないのだ。
「早く元気になってくださいね」
帰る支度を済ませると、縁は小さな声で依人にそう呟いてから後ろ髪を引かれる思いで部屋を後にした。
玄関でローファーを履き替えて、ドアを開けようと取っ手を握る。
その時、後ろから足音が聞こえた。
振り向かなくても足音の主は、依人だと分かった。
「先輩、起こし――――」
起こしました? という声は出なくなった。
前触れもなく手首を引かれ、腕の中に閉じ込められたから。
息苦しくなるほどきつく抱き締められて、縁は驚きのあまり目を丸くさせたまま固まっていた。
「急にごめん。ちょっと嫌な夢を見ちゃって」
「大丈夫ですよ。どんな夢を見てしまったんですか? 嫌な夢は人に話すといいらしいですよ」
縁は背中に腕を回すと、片方の手で背中をぽんと優しく撫でてやった。
不思議と冷静に対処出来た。
おそらく、依人を安心させなきゃ、という気持ちが強かったのだと思う。
しばらく背中を撫でて宥めていると、依人は歯切れ悪そうだが、夢の内容を打ち明けてくれた。
「……縁が他に好きな人が出来たって俺を振る夢、見てしまったんだ」
声が少し震えていた。
縁はぎゅっと抱き締め返しては、依人の胸に顔を埋めた。
「それは絶対正夢になりません。だって、あたしは先輩のことが大好きで、あたしが先輩から離れるなんて有り得ませんから」
「縁……」
「絶対、離れません。先輩に振られるまでは傍にいます」
「それならずっと一緒だね。俺も縁を離す気はさらさらないよ」
二人は無言のまま見つめ合っていた。そして、口付け代わりにお互いの額を重ね合わせた。
「好き、です」
「俺も縁が好きだよ」
縁は傍で静かに見守っていた。
(熱は先輩の言う通りあまりないね。よかった)
そっと手のひらを額に乗せると、あまり熱くなかった。
(先輩の寝顔を見るの、クリスマスの朝以来かも……本当に羨ましいくらい綺麗な顔だ)
睫毛の長さといい、滑らかな肌といい、依人は女子が羨む要素を持っている。
縁はスマートフォンのカメラに収めたい衝動を抑え、心のアルバムに依人の寝顔を焼き付けたのだった。
「そろそろ帰ろうかな」
スマートフォンの電源をつけると、画面の時刻は夕方の六時過ぎに差し掛かっていた。
そろそろ帰って、夕飯の支度をしなければいけないのだ。
「早く元気になってくださいね」
帰る支度を済ませると、縁は小さな声で依人にそう呟いてから後ろ髪を引かれる思いで部屋を後にした。
玄関でローファーを履き替えて、ドアを開けようと取っ手を握る。
その時、後ろから足音が聞こえた。
振り向かなくても足音の主は、依人だと分かった。
「先輩、起こし――――」
起こしました? という声は出なくなった。
前触れもなく手首を引かれ、腕の中に閉じ込められたから。
息苦しくなるほどきつく抱き締められて、縁は驚きのあまり目を丸くさせたまま固まっていた。
「急にごめん。ちょっと嫌な夢を見ちゃって」
「大丈夫ですよ。どんな夢を見てしまったんですか? 嫌な夢は人に話すといいらしいですよ」
縁は背中に腕を回すと、片方の手で背中をぽんと優しく撫でてやった。
不思議と冷静に対処出来た。
おそらく、依人を安心させなきゃ、という気持ちが強かったのだと思う。
しばらく背中を撫でて宥めていると、依人は歯切れ悪そうだが、夢の内容を打ち明けてくれた。
「……縁が他に好きな人が出来たって俺を振る夢、見てしまったんだ」
声が少し震えていた。
縁はぎゅっと抱き締め返しては、依人の胸に顔を埋めた。
「それは絶対正夢になりません。だって、あたしは先輩のことが大好きで、あたしが先輩から離れるなんて有り得ませんから」
「縁……」
「絶対、離れません。先輩に振られるまでは傍にいます」
「それならずっと一緒だね。俺も縁を離す気はさらさらないよ」
二人は無言のまま見つめ合っていた。そして、口付け代わりにお互いの額を重ね合わせた。
「好き、です」
「俺も縁が好きだよ」



