放課後、帰り道にある大型のスーパーで買い物をしてから、依人の自宅へ向かった。


向かう途中、依人にもうすぐ着くことをラインで知らせると、待っていることと、念のためマスクを着けてと言う返事が来た。


マンションのエントランスに足を踏み入ると、縁はマスクを着けてエレベーターホールへ向かった。


「来てくれてありがとう」


縁を出迎えた依人は、スポーツブランドの黒のパーカーに同色のスウェットのズボン、縁と同じようにマスクを着けていた。


マスクで顔が半分隠れても、整った顔立ちは隠し切れていなかった。


「先輩、歩いて大丈夫ですか?」


縁は、病人なのに歩かせたことに申し訳なくなった。


「大丈夫だよ。今はほぼ平熱よりの微熱だからね。昨日の方が酷かったかな」

「……良くなりつつあるんですね。でも、身体を冷やすといけないからベッドに戻ってくださいっ」


縁はぐいっと依人を押して、ベッドのある部屋に戻るよう促した。


依人がベッドに入るのを見届けると、


「先輩、喉は渇いていますか? スポドリ買ってきたんです」


縁は袋から一・五リットルのペットボトルを取り出した。
袋の中には他に冷却シートやゼリー飲料、スムージー状の野菜ジュース、一人分のうどん麺が入っている。


「ありがとう。コップ好きなの使っていいから入れて貰えるかな?」

「分かりました」


縁は袋を提げてキッチンへ向かった。


スポーツドリンクを注ぐ前に、食料を冷蔵庫に入れようとしたのだが、中は見事に空っぽだった。
あるとするなら二リットルのミネラルウォーターと、六個入りの卵のパック、箱を開けていない生姜のチューブくらい。


(先輩……ご飯食べたの? 後でうどん作ろうかな。その前にキッチンを借りていいか聞かなきゃね)


縁は頭の中でそんなことを考えながら、食器棚から白のマグカップを取り出し、スポーツドリンクを注いだ。