>>依人視点


「先輩っ」


放課後いつものように彼女である縁のクラスへ向かうと、縁は満面の笑みで依人の元へ駆け寄る。


その時の縁に、ぶんぶん振る柴犬の尻尾の幻が見えてしまい、あまりの可愛さに頬が緩みそうになる。


縁は彼氏の贔屓目抜きにしてもかなり可愛い。


本人は地味な女子と評しているが、実際は十人中十人が認める美少女だ。


毛先がふんわりした黒髪のボブに、雪のように白い肌、丸っこい大きな瞳、さくらんぼのように赤い小さな唇、小柄だが華奢でスラリとした体躯。


非常に庇護欲がそそられる。


あまりの愛らしさに、依人自身も含め何人の男子が犠牲になったことか。
途中から数えるのを放棄した程だ。


「寄り道しながら帰ろうか」


暗にデートしようと言う意味を含ませると、縁の大きな瞳はキラキラと輝き出した。


「嬉しい……今日はもっと先輩といられるんですねっ」


(縁……なんでこうサラリとドキドキさせることばっかり言うのかな)


依人は仕返しと言わんばかりに縁の指を絡ませて手を繋いだ。


「……っ」


雪のような肌が瞬く間に赤く染まった。


お祭りデートの時、キスはご褒美だとか不意打ちで大胆な発言をする癖に、手を繋ぐだけですぐ赤くなる無垢な一面を見せる縁。


こんなギャップを、自分以外の男が知っていたら嫉妬で気がおかしくなるのではないかと考えてしまう。


(本当に敵わないな……)


依人は日に日に縁にのめり込んでいることを自覚した。