縁日が行われている神社は、既に大勢の人で賑わっていた。
友達同士や、カップル、家族連れがちらほらと見られる。


駅から繋がれた手は離れることなく、痛くない程度にしっかりと握られた。


「思ったより人が多いね」


そう言いながら縁のペースに合わせてくれる依人。


(優しいな……こんな人混みさっさと抜け出したいだろうに)


縁は申し訳ない気持ちと感謝でいっぱいだった。


歩いている途中、ふと数多の視線を感じた。


それは縁自身ではなく、傍にいる依人に注がれていた。


単に背丈があって目立っているだけじゃない。
依人の端整な容貌があまりにも女(ひと)の目を引くのだ。


格好いいだの、声掛けてみようだの、と言う周囲にいる女性の声が耳に入ってしまう。
依人のことになると過敏に反応してしまうようだ。


(あたしには勿体ない人なんだって思い知らされるな)


学校の外でも異性を魅了する彼に、縁は洩れそうなため息を噛み殺した。


どうにか人混みから抜け出し、休みがてら参詣道の隅に立ち止まった。


「結構歩いたけど足痛くない?」

「大丈夫です」


にこりと微笑んで答えると、依人は「よかった」と縁の髪を撫でた。


「何か食べたいものはある?」

「林檎飴が食べたいですっ。いいですか?」


お祭りと言えば林檎飴。
行く度に必ず食べるほど好きなものだ。


「林檎飴ね。探しながら色々屋台を見ていこっか」

「はい……わっ」


依人は突然繋いでいた手を離して、縁の腰に手を回した。