「縁、試験の順位が張り出されたって」


どうにか試験を乗り越え、終業式まであとわずかとなったある日の昼休み。


お昼ご飯を食べ終えた後、親友の北川鈴子(きたがわ りんこ)に手を引かれて結果が張り出された場所まで連れて行かれた。


各学年の試験結果は、一階の生徒用玄関の近くにある掲示板に張り出されている。


「よしっ、順位が上がった!」
「最悪……また下がった……」


掲示板の前では生徒の様々な声が飛び交っている。


人だかりの中、縁は背伸びしたり、ぴょんぴょん跳ねたりして覗こうと試みるが、小柄なせいで全く見えない。


「鈴子、見える?」

「なんとか」


縁と違って170近い背丈の鈴子には見えたらしい。


「三年の一番は桜宮先輩だった」

「凄い……」


(ちょくちょくあたしの勉強を見ていたのに一位って……凄すぎるよ!)


その頭の良さは最早チートの域ではないか。依人に対して尊敬を通り越して畏怖の念を抱いていた。


「縁も凄いよ」

「え?」

「十番以内だよ」


鈴子の言葉に縁は驚きのあまり目を見張った。


「そんなっ、冗談きついよ」


前回は二十番台だったので、一気に順位が上昇するなど有り得ないと思った。


「本当だって」

「ひゃっ!」


鈴子は縁の脇に手を差し込み、思い切って持ち上げた。


「見えるー?」

「う、うんっ」


いつもより数十センチ高い視界は怖いが、あんなに見えなかった順位表か良く見えた。


(嘘でしょ!?)


鈴子の言う通り、八番に自分の名前が載っていた。