昼食を食べた後、勉強を再開したのだが、縁は数学の問題につまずいてしまった。


(あれ? ちゃんと公式に当てはめたのに、解答が違うよ)


何処が違うのか、目を皿にして探して見るが、分からずじまいだった。


「先輩……聞いてもいいですか?」


埒があかないと悟った縁は、依人にSOSを出した。


「いいよ? 分からないところある?」

「はい」


縁は件(くだん)の問題を依人に見せて、正しい解答が出せないことを伝えた。


「あぁ、これ使う公式が間違ってる」

「そうなんですか?」

「この問題文が紛らわしいんだよ。こっちの公式に当てはめてみて?」


言われるがままに依人の言う公式を使って解いてみると、本来の正しい解答を出すことが出来た。


「やだ、あたしったら勘違いしていたんですね」

「思い込みはケアレスミスの元だから、問題文は落ち着いて読むこと」

「肝に銘じておきます」


縁は大きく頷いた。


(流石、学年首席……)


依人は入学時からずっと学年首席だ。
それは校内の生徒の間では既知の事実であった。


「分からないところが出てきたら遠慮なく聞いてね?」

「ありがとうございます」


しかし、上から目線になることもなく、ひけらかす真似もしない謙虚な姿に、縁は尊敬の念を抱いた。