王子様の溺愛【完】※番外編更新中

「まあ、俺はちょっと気になっただけで、特に反対してないよ」
「そうなんですか?」

縁に相応しくないと突っぱねられたらと不安だっただけに、あっさりとした千紘に依人は拍子抜けしてしまった。

「タメで話していいよ。俺ら同い年でしょ」
「そうさせてもらうよ」
「ただ、気を付けて」
「ただ?」
「俺の兄貴、相当なシスコン属性だから、いつか会う時覚悟しといた方がいいよ」

まだまだ強敵がいるようだ。

「肝に銘じておく」

依人が頷くと同時に、背後から「先輩」と呼ぶ縁の声が耳に入った。

「おかえり」
「ただいま、です」

へらりと破顔する縁に、胸の中が騒ぎ出す。

「千紘くん、あたしと同じ格好してるね。ウイッグも着けたんだね」

縁は無邪気に「双子ルックだー」と笑っていた。

「普通に会うだけじゃ面白くないからねー」
「今日何着るか教えてって、そういうことだったんだ」
「そうだよ」

(俺と話した時言葉遣い荒かったよな。二重人格にも程があるだろ)

依人は縁と千紘のやり取りを見つめながら、一人苦笑を零していた。


「すごい並んでる……」

千紘の案内で三年一組のクラスへ向かうと、既に長蛇の列を成していた。大半は同年代の女の子ばかりだ。

「席の予約はとってあるからすぐ座れるよ」
「わざわざありがとう」
「ありがとう」

どやっとふんぞり返る千紘に、依人と縁は笑いを零しながらお礼を述べた。

「この女の子、俺の親戚だから丁重にもてなせよ」

千紘は入って早々、宣言するようにクラスメイトに告げる。

給仕を担っていた男子生徒達は、一斉に縁に視線を向けた。
一度クラスメイト(千紘)と瓜二つの顔を一瞥すると、千紘にはない服越しの胸元に視線の先を変えていた。

「この子が白川の親戚?」
「女の子は違うな。瓜二つなのに超可愛い」
「比べて見てみると、女装してても白川はやっぱ男だなぁ」

頬の赤らめ、鼻の下を伸ばす下衆な視線は正直面白くない。

依人はその視線を向けた男子達に笑いかけると、彼らは気まずそうに接客を再開したのだった。

「先輩、何頼みます?」

縁は下衆な視線に全く気付いていないようで、にこにことお手製のメニュー表を広げ始めていた。