「好きです!付き合ってください!」
「もちろんです!」
夢にも見た景色だった。
5月1日。
入学して間もなかった僕は、ある先輩に恋をしてしまっていた。それは当時の僕にとって、してはならないことだった。なぜなら僕には、彼女がいた。しかし、その先輩は今まで付き合ってきた人とは何かが違った。だから、先輩のことが好きだった。
そのことがバレ、彼女とは別れた。最初の頃は好きだったはずなのに…人間とは不思議だ。と僕は感じていた。そして、その次の日の出来事だ。早すぎる気がした。でも、前に前に進もうとする僕の「心」を止めることができなかった。
「そーくん!」
「あ、あき先輩!おはよー!」
朝から少しばかり幸せな時間だった。
しかし、これもまた、いけないことなのであった。理由を説明するなら、僕はある高校の吹奏楽部に入っていた。その吹奏楽部は部内恋愛禁止だったのだ。その先輩も、吹奏楽部だ!いつでも一緒にいられる。あき先輩が吹くトランペットの音。これを聞くのが大好きだった。でも、部内恋愛は、いけないことだ、なので秘密の恋…のはずだった。
あっさりとばれてしまい、こてんぱんに怒られた、情けない話だ、そんなこんなで、僕は吹奏楽部を辞め、廃部寸前のバレー部に入った。理由は、入れば即レギュラーだったし、あと一人で試合に出れるって状態で、友達に誘われたからである。
ある日の練習明けだった、僕は体調が優れず、機嫌が悪かった、家に帰ると、カンカンに怒った母が待っていた。
「何この点数。やる気あんの?バカなの?」
腹がたった、
「俺だってこんな点数取りたくてとってねーつーの!」
僕はそのテストを母から取りビリビリに破りすてた。その後部屋に戻ろうとすると母が僕の手を掴んだ。
「何?」
母が僕を見る目が変わった。
ゆっくりと手が解けていき母は、泣き崩れた。
その瞬間、僕は視界が真っ暗になって、気がつくと、見覚えのないベットの上で寝ていた。
横で誰かの話し声が聞こえる。
「少し落ち着いて聞いてください…
あ…そうかくん。おはよう。
そうかくんも、寝たままでいいから聞いててね。」
なんかテレビで見たことあるような景色で「僕死ぬのかな?」とかいう不安がよぎった。
「そうかくんの体は…
いいえ、心はとても大変な状態です。
簡単に申し上げますと病名は『心做し』つまり、この子は…そうかくんは心がありません。この子が今まで人を好きになったりしたのは、自分の中で鎖でつなぎ、自分に言い聞かせてたからなのです。」
僕は、それを聞いた瞬間、頭が真っ白になった。
「嘘だ…嘘だ嘘だ嘘だ!!!」
僕は立ち上がり、医者の胸ぐらをつかんだ、僕をつないでいた点滴が落ちる。
「なぁ、嘘だと言ってくれよ。俺は好きな人だっている。守らなきゃいけないんだよ…」
また頭が真っ白になった。
「嘘ではありません。残念ながらこの子は、一生人を愛することはできないでしょう…
この状態で外に出すのは危険です。
落ち着くまで入院しましょう。」
もう、言葉も出なかった。
「やっほー!おみまいに来たよー」
「あー、うん。ありがとう。」
「ほんとー、試合でれんやーん!もー!!」
「ごめんね。一人で来たの?」
「ワッ!!!!!!!」
「ワッ!!!!!!!」
「わ!!!!あき先輩!!ゆーなまで!
どうして?」
「当たり前やろー?彼女だもん!」
胸が痛くなる。
「そーやね。ゆーなは?」
「そーしにつれてこられたの!心配だーっていうからさ!」
「いいね!ラブラブで!」
「余計なお世話です!
でも良かった!元気そうで、
って事邪魔しちゃ悪いから帰るね!」
帰らないで…
なんて言えないから、手をふった
病室にあき先輩とふたりっきりだ。
沈黙が続く
破ったのは僕だった。
「ねぇ、もしも、全て投げ捨てられたら、笑って生きることが楽になるの?」
「なんでそんなこと言うのもうやめてよ。」
僕の胸にあすかが飛び込む。
「好きだよ。」
あすかが言った。 
また胸が痛くなった。
僕は抱きしめて。
「もう何も言わないでよ。」
とだけ言った。
言葉がおかしいことは承知だ。
変な質問をしといて、何も言わないでよは、絶対におかしい。
でも、そうするしかなかった。


つづく。