「竜くんは社内恋愛したことあるの?」


「は?」



あたしの詞に怪訝な顔をする。



「聞いちゃダメだった?」


「いや、そんなこと聞かれると思ってなかっただけ」



頭をガシガシッとかく。

やっぱりしたことがあるから言い難いんだろうか。



「あるんだ?」


「あるっていうかまぁ……」



〝ある〟と〝ない〟以外に答えはないはずなのだが。
何を口ごもる必要があるのだろうか。



「あるの?ないの?」


「……ある」


「やっぱり」



あの慣れようは絶対に経験があったからだとおもった。



「やっぱりってなんだよ」



あたしを見て苦笑い。



「あたしは社内恋愛なんて知らないからいつも精一杯なのに、竜くんは慣れてるから」


「別に慣れてるわけじゃねぇよ」



前の彼女ともあそこで密会をしたのだろうか。
だとしたら、あそこでは会いたくないとさえ思ってしまう。

会社のなかで密会できる場所なんて、限られてるのに。