ふたりきりになったブースの中。
ちらっと須坂さんを見てみるけど全然目すら合わない。



やっぱりあの日のことはふざけていただけなのだろうか。



〝たくさん愛してあげる〟
あの言葉があたしのアタマからは離れないっていうのに。
彼は全然動じていないみたいだ。



考えるのはよそうと頭を横に振って、パソコンに向かう。

響き渡るお互いのキーボードを打つ音。
これがなんだか心地よく感じてしまうなんであたしらしくない。

きっと須坂さんの魔法にかかってしまったからだ。



「茜」



バタンと扉が開いたかと思うと元太が入ってくる。



「元太、どうしたの?」



里衣子と帰ったはずだったのに。



「差し入れ」



コンビニの袋をあたしの横に置く。



「いつもありがとう」


「俺ら大して任されてないから残業なんてならないけど、茜たくさん仕事あるからさ。これぐらいさせてよ」



元太の心遣いに顔が綻ぶ。