ブーブー…


「あ、電話」


画面を見ると"さやか"の文字。

そう言えば、さやかを置いてきたままだった!

震えるスマートフォンを操作して電話に出た。


『ちょっと、どこに居るの!?』

「あ、ごめん。今ちょっと離れた手洗い場に居るの」

『はぁ?大丈夫なの?』

「うん、もうさっきの人も帰ったよ。すぐそっちに行くね」


そう言って電話を切ったあと、小走りでさやかの元に向かった。

合流後、さやかにこっぴどく叱られたのは言うまでもない…


「勝手に知らない人と行動しちゃダメだよ!」

「ごめんってば。あのときは必死だったの。でも悪い人ではなさそう…だったよ?」

「あのねぇ、その油断が…」


ガミガミと話続けるさやかをよそに私は、さっきの男の人を思い出していた。

コートのポケットに入れたカイロを握りしめると、なぜか心まで温かくなって。


これが何なのか私が知るのは、



まだ先の話。