「で、これから君はどうするわけ?」
幼くも艶やかな声に反応して振り返る。
「リーフ…」
「ルーって名をアリシアに貰ったから…
それでお前はどうするんだ?宙」
相変わらず何を考えているかわからない笑みを浮かべながらこちらに向かって歩いてくる。
まさか、彼まで味方につけるなんて…
美影は本当に凄いや
「ルーは分かってるんだよな…
俺が何をすべきか。」
「そりゃまぁ少なくとも“お前”じゃ無理だよ?」
「“アルベール”なら…と?」
俺の中にはふたつの人格が存在するらしい。
そして、“俺”自身は“後から”産まれた存在だ。
それは多分、美影の影響もあるんだろうけど……顔も知らない母の血のおかげだと思っている。
「いいや」
少し間を開けてから、彼は首を振った。
「アルベールでも、ラミア以上の強さはあるものの魔王には到底及ばない。」
そして俺の肩をドンッと押してそのまま草原に倒れ込む。
「ここからは教えてあげない。
精々自分で探せよ。」
「はい」
立ち上がって深く礼をした。
それを合図にフレンチさんが俺の方へ走ってくる。
責められる
そう思っていたのに、降ってきた言葉はあまりにも意外すぎてついていけなかった。
「よく、戻ってきたっ」
複雑そうに笑う彼女を凝視する。
「……せめ、ないんですか?」
ついには聞いてしまった。
「…そんな資格は私にはない。いや、ここにいる全員にそんな資格はないと思っている。」
どうして?
「私達は、今まで彼女に出会うまで守ろうともしなかった。でもお前は違う……ずっと長い間彼女のために人生を捧げてきたんだろう。
それを…どうして責めることが出来るんだ?
寧ろ私達を、責めてくれ……っ」
フレンチさんは目を潤ませて今にも泣きだしそうだった。
よくわからないけど…自分の中で何かがふっと軽くなった気がする。
「宙!」
「……エリック?」
「俺は副隊長でフレンチさんの部下だけど…お前のこと、大切な友人だと思ってる。
だから姫さんを迎えに行くなら、
連れて行ってくれ。
ほっといたら何するかわかんねぇし…
俺もお前の力になりたい。」
エリックはそう言った後、この重い雰囲気を晴らすような眩しい笑顔を見せた。
なんだよ、これ
頬にあたたかいものが伝う。
この人達といたら調子が狂うんだよ。
まるでここに居てもいいと言われているみたいで……どうしようもなく嬉しかった。
「…行くんだろ?」
懐かしい声に振り返ると、そこにはここにいる誰よりも強い瞳を持った夕紀がいた。
強く頷くと、夕紀は俺の肩にポンっと手を置いた。
「俺も行く」
「ん」
腕で涙を拭うと夕紀の後ろを追いかける。
しかし、誰かに服の裾を掴まれて、それは制された。
振り返ると、レリアスの従者であるシェリーが瞳を潤ませてこちらを見ている。
「まっ、て、ください」
おどおどとしながらも頑張って言葉を並べている。
「……美影様は…ずっと、魘されてたんです。」
「ぇ…?」
「アルベール様が姿を消してからずっと、
夜中に料理について考えていると
毎晩美影様の苦しそうな声がきこえてきました。
殆ど、寝れていないのに…
それでも笑顔を浮かべていた。
言わないでって言われましたが…
どうしても伝えなきゃって…
美影様を庇って犠牲になるなんて、
もう二度としないでください。
もう、これ以上…
苦しい思いをして欲しくない。」
本当に、最悪なことを考えていた。
抑えていた愛しさが溢れ出して、どうしようもなく彼女に会いたくなる。
今の俺、相当ださいな…
「約束するよ
もう彼女のために自分を犠牲にしようなんて
思わない
“共に”歩いて行ける未来を第一にする。」
そう伝えると、シェリーは嬉しそうに笑った。
そしてみんながいる方へ向かって礼をして、待たせていた夕紀のもとへ。
「もう一度ここへ来た時は、決戦の時。」
不安な気持ちを振り払いながら、一歩ずつ前へ進んだ。

