下駄箱でせかせかと靴を履いていると、何か言い争う声が聴こえた。
「や、やめてください。」
靴に入れ掛けの足が止まった。
誰か、泣いてる。
自分には関係ないよ。
こんなの、不良校ではよくあることじゃない。
心の中で何度も言い聞かせて外に出ようと足を踏み出す。
「誰か助けてくださいっ」
ばか、なんで足止まってるのよ。
こんな所で引き返して傷付くのは自分じゃない。
「誰かっ…!!」
高い声が頭の中に木霊した。
小さい頃に私が何度叫んでも、誰も助けてくれなかった。
あの、言葉。
「助けてください!!」
あぁ私って馬鹿なんだな。
校舎裏の方に足が勝手に動く。
カバンを地面にストンと落として、それを合図に勢いよく走り出した。
なんで、なんで、なんで、
思いと反して走り続けた。
だんだんと、女の子の泣き声が大きくなる。
『や、やめて、くださいっ』
怖くて足も声も震えた。
色黒の荒手で有名な大沢先輩に数人の取り巻き。
その中に一年生らしき可愛い女子生徒が頭を抱えていた。
「あぁ?」
大沢先輩は私の方を鋭く睨んだ。
しかし、次には怪しく笑って近くの男子生徒に何らかの指示を出す。
その男子生徒はにやにやと笑いながら私に近づいてきた。
足が震えて動けない。
どうしよう、嫌だ、来ないで。
震えていた女の子は期待するような視線を私へ向けた。
そうだ、私、あの子を助けに来たんだ。
「あ!?」
震える足を精一杯動かして彼女を抱きしめた。
『大丈夫、だよ。』
小さい頃に私がかけて欲しかった言葉を彼女に言った。
震える肩をポンポンと撫でてあげると安心したように抱き返してくれる。
「何が、大丈夫なんだ?あぁ??
お前に何か出来るのかよ。」
何も、出来ないよ。
けど放って置くことも出来なかった。
『彼女に何があるか知りませんが、やめてください。』
「なめてんのか……おい。」
大沢先輩が私の顔を掴んで舐めるように見回した。

