セドリックはその脳裏にアデルの姿を思い浮かべるかのように、フッと顔を綻ばせる。


「生まれた時から、ずっと。僕にとって、彼女は立派な女だよ」


そんな言葉を優しく微笑みながら呟くセドリックに、ライアンは何故だか胸がドキッと跳ねるのを感じた。
ライアンの反応を横目に、セドリックは口元を緩めて言葉を続ける。


「ライアン。君だって僕と同じだろう? 君の大事な妹は生まれた時からずっと女だ。幼い頃、剣を振るう僕と君の後をいつもくっついて来て、『仲間に入れて』って泣いたアデルは、本当に可愛い女の子だった。そしてそれは、男勝りな今だって全然変わらない」


凛と声を張り、明瞭に畳みかけるセドリックに、ライアンはグッと言葉に詰まった。
そんな彼に、セドリックは鋭く細めた瞳を向ける。


「僕だって、君と同じように、姫君らしくしてくれればいいのにって思ってた。それでも……アデルが自分の意志で騎士になりたいと言うなら。王太子軍騎士になって僕に仕えたいと言うのなら、僕はそれを止めるつもりはなかった。今までも、これからだって」


セドリックは少し声を低めて、どこか自嘲気味に口角を上げた。
ライアンは彼のそんな様子にのまれ、口を閉ざしたまま黙っている。