純な、恋。そして、愛でした。



何度も明転したり、暗転したり、世界は数舜で色を変える。天候や季節だけが、世界の色を変えるのではないらしい。


そのことを知っている人って、この地球上に一体何人いるのだろう。
もしかして私だけだったりする? ……そんなわけないか。


愛生のことを悲しまなくなったわけじゃない。忘れたわけでもない。
ただ私のそばに今でも君がいるような気がしているんだ。私は今でも君と生きている。
そう、感じずにはいられない。


だって今でも君の存在を感じて、私は元気をもらっている。会えないよ、でも、君が一瞬でも私のお腹の中にいたことが誇らしい。


恋も愛も知らなかった私に、大事なことを教えてくれたのは間違いなく君だったから。
それから……彼。


「黒野くんっ、おはよう!」


私の初恋の相手。そして永遠に愛する、運命の人。
なに綺麗ごと言ってんだって、まだ十七の高校生がなに永遠だとか戯言抜かしてんだってそう鼻で笑われたって全然かまわない。好きなだけ笑ったらいい。


これからの人生でそれを証明していけばいいのだから。
だってこんなにも相手の幸せ願えるなんて、もうこんなの愛でしょ?


自然と心の中から湧いて来る温かくて、思わず相手を抱きしめたくなる感情。半年前の自分に教えてあげたい。私、宝物をもうすぐ手に入れるよって。


だから腐らずちゃんと生きてと。


自分以外に大切にできる宝物を見つけた瞬間。きっと人生はより一層輝き出す。
私はもう見つけた。


***


クリスマス当日。夕方五時に黒野くんのお母さんは予定通り来店された。
黒野くんは緊張した面持ちで対面すると無言でケーキの入った箱を彼女に差し出した。


「ありがとう」


彼女は笑って受け取った。
お金を渡して会計を済ませると、母親だと名乗らずに店を出た。


私は黒野くんの決断を応援すると、おばあちゃんと同じように決めていた。


でもその背中に黒野くんは「また来てください」と言葉をかけた。彼女はこちらに振り返ると一瞬だけ驚いた顔をして「はい」と微笑んだ。


小さな一歩かもしれない。
だけど、十七年の壁は、そんなに薄くないということなのかもしれない。
それでもゆっくりでいいと思うんだ。人間関係は、親子でも複雑に絡み合う。
いずれ黒野くんが納得できる形になってくれるように私は祈っている。