純な、恋。そして、愛でした。




こんなに質問攻めしたらうざったいって、そう思われるのかもしれない。
いやもうそう思われているのか、そいったものが雰囲気から醸し出されていて、なんとなくだけれど伝わってくる。


それでも知りたいんだ。冷ややかな目の奥で、なにを考えているのか。
昨日なにを思って私に声をかけて、苺ミルクを差し出して、涙をすくってくれたのか。


「……迷惑なんだよ」

「迷惑?」

「目の前でため息なん回も吐かれたり、気分悪そうにうなだれてんのを見るのも」

「…………」


聞かれた質問に対して、迷惑だと言われたのかと思った。だけどそうじゃなかった。


「見たくなくても見えんだろ、前の席なんだから」

「……うん、確かに」


そだけど、でも、それって……。


「黒野くんって案外優しいんだね……?」

「はあ⁉ なんでそうなるんだよっ‼︎」


声を荒げた彼に「だって」と「そうじゃん」の言葉を差し向けた。


だってそうじゃないか。
目に見えているからって、行動に移さない選択肢だってあるわけだし。


たとえ私が目の前で存分に具合悪そうにしていたとしても、気にせずスルーたらいいのだ。


なのにそうしなかった。
だから黒野くんは困っている人を見過ごせない、優しい人だと思うわけ。


「……バカじゃねえの、お前」

「褒め言葉かな?」

「だからなんでそうなる」

「事実だからじゃん」

「めでたい頭してんだな」

「よく言われる」


本気じゃない言葉で告げると彼は呆れたような深いため息を盛大に吐いた。
けれど私の気分はそんなに害されなかった。
こんなに彼と会話したのは初めてだし、私以外にはいないだろう。


なんか、ちょっと、優越感。


彼の目を見つめたまま少しだけ笑うと「ムカつく」とだけ言われた。
それでも良かった。
もっと黒野くんのことが知りたくなったかもしれないなんて、バカげているだろうか。


すました顔、低い声、不愛想な態度。そのどれも全部が気に食わないってそう思っていたけれど、昨日と今日、すこし話してみて印象がちょっとだけ変わった。


不器用なだけで、良い人なのかもしれない、もしかしたら。