何度も再生される鮮明なシーン。
あんな風に抱き締められる彼女が羨ましいと思う事に、なんでなの?と自問自答を繰り返す。

「なんなんだろう。…この気持ち。……泣きそう」


気付けば、部屋のベッドの上。
もう幼馴染としていられないって事の事実を叩き付けられたようで涙が止まらない。
私は慌ててベッドサイドのティッシュで溢れ返る涙を拭いた。



このよく分からない宙ぶらりんな心の中。
私は何が悲しくて、何が苦しいんだろう。

りょーたが、大切だから。
私が今更何か言って、りょーたの幸せは崩せない。


「バカみたい。…ほんとあたし、鈍感だ…」


どんどん大人になっていくりょーたに私は嫉妬していた。
なかなか辿り着けないこと、追い付けないことに、焦れていたんだ。


だから、素っ気なくした。
それが、どれだけりょーたを傷付けているのかも気付けずに。

彼女がいたっていなくたって、りょーたはりょーたで、私の事を心から大切にしてくれていたのに。

私は、ずっと、りょーたの何を見て「幼馴染」だなんて言って来たんだろう。

「ごめん」とすぐに言いたかった。
でも、こんなんじゃ、ダメだ。

「今更だけど、ほんとに…ごめん…」

ズキンと痛んだ胸。
こんな右も左もない真ん中の心で、りょーたに合わせる顔なんてなくて。
私はりょーたの部屋が見える方のカーテンをシャッと重く閉ざした。


…りょーたの腕の中にいるのが、自分だったなら…。

そんな気持ちに思い切り気付かないフリをして、蓋をしたんだ。


「ばか、りょーた。でも…一番バカなのは、私、だ…」

グラグラと揺れる気持ち。
先パイを好きだと思っていた時には感じられなかった想い。


だけど。

これは、認められない。

だって、私達は…。


「幼馴染、でしょう?」

真っ暗な部屋の中、呟きは影を落とすだけだった。