「姐さん」 ふと、女を呼ぶ幼子の声がする。 視線を向ければ、女の禿が緊張した様子で座っていた。 「今、土方はんから言伝てが……」 「今宵は来れなくなった……」 禿が言う前に女が淡い笑みを浮かべながら言った。 女はクスリと笑うと、再び外に視線を向けた。 「次、来はった時、面白いことが聞けそうやわぁ……」 楽しそうに目を細めた女の髪の中で何かが光る。 それは青色のトンボ玉のついた簪だった──。