「手は痛むか?」 首を横に振ると、彼は「そうか」と安心したような顔をする。 あの後、男はあれだけしつこかったのに、彼の名前を聞くなり一目散に走り去っていった。 それほど、彼の名前は他人に恐れられているのだろう。 そして、私は今、擦りむいた手を彼が持っていた手拭いを裂いたものでグルグル巻きにされていた。 「これで良い」 「あ、ありがとうございます、土方さん」 お礼を言うと、彼は険しい顔をする。 え、何か変なこと言った……?